第8回山のトイレを考えるフォーラムの報告

(2007年3月)

(写真撮影:山のトイレを考える会 西田弘氏。スナップ写真も同様)
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平成19年3月10日(土)13時30分~17時30分 札幌市「かでる2・7」730研修室 参加者:64名

テーマ:山小屋トイレの維持管理について考える


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01.表紙

02.目次

03.巻頭言:山岳トイレ管理 横須賀邦子 (山のトイレを考える会 代表 )

04.2006年山のトイレを考える会活動報告

05.山のトイレを考える会ニュースレター №7 2007.1.16

06.山のトイレ問題雑感 岩村和彦 (山のトイレを考える会 副代表 )

07.富士山および南アルプス南部における施設整備とその費用負担 伊藤太一(筑波大学) 

08.山のトイレとエコトイレ-日本と北欧の経験から- 穂苅康治(槍ヶ岳観光㈱代表取締役 )

09.計画論の視点からとらえる避難小屋管理のあり方 伊藤太一(筑波大学) 

10.ニュージランドの保護地域における利用者施設管理 伊藤太一(筑波大学) 

11.避難小屋の施設整備状況 高橋信一 (東日本避難小屋を守る会代表 ) 

12.美瑛富士避難小屋に似合うトイレについての再考 仲俣善雄 (山のトイレを考える会) 

13.2006年度日本百名山「幌尻岳」のトイレ問題とその対策 高橋健 (日高山脈ファンクラブ事務局長 )

14.2006利尻山のトイレ対策について 須間豊(利尻富士町産業建設課)

15.利尻山山岳環境史の再構築への試み 佐藤雅彦 (利尻町)

16.平成18年度黒岳トイレの運用状況について 大道具一 (北海道上川支庁・環境生活課主査 )

17.日本一の山小屋トイレ(バイオトイレ )の提案 田中則夫(㈱環境シーエスワン代表取締役)

18.富士山のトイレ整備と維持管理について 森下一祥(静岡県環境森林部自然保護室)

19.トイレの維持管理に関すること 平成18年度富士山環境保全対策連絡会・配布資料から抜粋

20.和賀川水系だより~早池峰の今~ 永田京子 (和賀川水系の自然を考える会)

21.携帯トイレは山で普及するか~富山県での試みを追う~ 金子博文 (山と渓谷社)

22.2006本州の山岳トイレ状況等と北海道への展望 小枝正人(山のトイレを考える会)

23.望ましい登山道の管理と整備とは? 愛甲哲也(北海道大学大学院農学研究院)

24.(前回)第7回山のトイレを考えるフォーラム議事抄録 (山のトイレを考える会)

25.編集後記 小枝正人(山のトイレを考える会)

フォーラム議事録(要旨)

・コーディネーター:山のトイレを考える会 岩村和彦

・司会 上井博志

1.代表挨拶 横須賀邦子

 お忙しいところご参加いただき感謝します。2000年6月,7年前に活動をはじめた。今回は「山小屋トイレの維持管理について考える」をテーマにします。これまでのようにトイレを作ることではなく,これから深めなければならない維持管理を議論する1回目とお考え下さい。よろしくお願いします。

2.活動報告 仲俣善雄

 2006年は,1年前に第7回のフォーラムを開催しました。議事録は今回の資料集に掲載しています。美瑛富士避難小屋トイレ設置の署名を4月末までおこないました。26768筆の署名をいただき,6月27日に環境省と北海道に提出しました。山のトイレマナー袋を作成しました。紙の持ち帰りをまずやって欲しいこととして,取り組んできたことでしたが,(株)ムッシュの支援により作成することができました。ムッシュ鈴木氏の紹介。トイレデーなどですでに登山者に,また関連団体に配布させてもらっています。トイレデーは9月3日に行いました。19箇所で100名をこえる参加がありました。環境省北海道地方環境事務所との意見交換会を行いました。1月にはニュースレターを作成,配布しました。大雪山の避難小屋のトイレに,ゴミの投げ入れの禁止を呼びかける注意看板を作成しました。取り付けは来年度を予定しています。

3.筑波大学伊藤太一氏講演

 「富士山および南アルプス南部における施設整備とその費用負担」

 専門は国立公園の計画や管理の歴史です。施設のあり方が人の利用に大きな影響を及ぼすと考え,その歴史を調べています。富士宮市にある富士山本宮浅間大社が,8合目から上の富士山の管理権を1604年に徳川家康から与えられています。2004年に管理権が確定しました。お賽銭の行方で400年ももめました。最初の登山は870年頃と言われています。室町時代の絵には多くの人が登っている姿が描かれています。1936年に国立公園になり,5合目の森林限界のあたりで開発はとめようということになりました。2000メートルにお中道があり,ぐるっと1週できます。登りと下りが分かれている道もあります。村山口は修験道でのぼられました。他の登山口は富士講という神道のような組織的な団体登山が行われていました。山頂でご来光をみるために夜中に登る方がいるのも富士山の特徴です。
 最初は関西からの登山者が多かったため静岡県側からの登山が多かったが,江戸時代以降現在も多くの登山はアクセスのよい山梨県側から行われている。吉田のまちは農業にも適さないので,登山者への対応から収入をえる御師(おし)が登山者の食料や装備,宿泊などを仕切り,江戸での登山客の勧誘も行っていた。途中の通行料もまとめて登山切手として支払っていた。江戸から富士吉田まで4日間かかり,神社でおはらいをし,登山門から入り8合目まで初日に登った。馬は450mの馬返しで返した。現在は2300メートルの5合目が登山口になります。登山門周辺には昔の神社などが残されています。賽銭を払わないと通れないような場所もあるなど,要所要所で登山者は金をとられた。歩道は人為的に御師により補修などが手配されていた。「道造銭」とよばれる賽銭も求められた。当時は道の管理がその場所での営業権に結びついていた。明治時代には外国人の記録も残されている。明治時代の記録には,山頂の小屋の外にトイレがあったことが記されている。江戸時代と現代ではルートに大きな違いはないが,車道の整備により登り始める場所がどんどん標高が高いところになってきています。年間20万人の登山者がいます。
 現在では様々なトイレが整備されています。牡蠣ガラを利用したバイオトイレ,燃焼式など様々なものが整備されています。それぞれのトイレでチップがもとめられます。富士宮市側の山頂には環境省が2億円かけて設置したトイレがあります。使える期間は1ヶ月くらいです。富士山のトイレで国の税金が10億円くらい使われている。トイレは設置されましたが,維持費が課題です。富士山では小屋の数も多すぎるのではとも考える。生物多様性の高い,森林地帯の利用を促進したほうがよいように思います。
 南アルプスでは,2万人くらいの登山者です。アクセスがよくない。国立公園になったのも遅いが,南部のほとんどが東海パルプの私有地です。避難小屋は静岡県が設置し,東海フォレストに管理を委託しています。アクセスのためのバスを,山小屋を管理している東海フォレストが提供しています。送迎バスという扱いで無料になっていて,乗るときに払う3千円が山小屋の宿泊費に充当されている。携帯トイレも取り組まれている。水が豊富なところでは水洗便所もある。避難小屋はカートリッジ式で年に1~2回,回収をしています。南アルプスは国立公園になるのが遅く,行政が小屋を整備したので,計画的に配置され,東海フォレストにより一元的な管理が行われています。トイレも維持管理とコストを考えて,形式が選択されています。  ニュージーランドには,14の国立公園があります。世界遺産もあり,映画のロケも最近では多く行われています。国営の山小屋が1030箇所あります。もともとはシカの管理をするためのもので,保全局が管理士,80名以下の定員です。施設をカテゴリ分けし,管理水準を定めています。ミルフォードトラックの山小屋には,トイレの数も朝の集中するときに必要な数が用意されています。歩道の途中にもピット式のトイレが2時間くらいおきに配置されています。稜線上には施設はつくられません。
 施設の整備についてまとめると,交通アクセスへの配慮,採算性,立地への配慮,チケット・パスの販売,無人の場合は自発的にはらって,巡回レンジャーがチェックなども考えられるだろう。

(質問)南アルプスのカートリッジはいくつありますか?

(答え)2つずつおいてあるはずです。他の資材の運搬とかねているので安くあがっているようです。

(質問)ミルフォードトラックのピットトイレはどのような処理方式?

(答え)貯留式で,トラクタやヘリコプターで回収しているようです。

(質問)東海フォレストは委託料をもらっていないから,利用者が減ると困るのでは。

(答え)登山道の管理も行っているが,いまのところ赤字にはなっていないようだ。

(質問)南アルプスの北部は?

(答え)国有林。山梨県側や,長野県側も国有林。

4.槍ヶ岳観光(株)代表取締役 穂苅康治氏講演

 「山のトイレとエコトイレ-日本と北欧の経験から」

 平成5年から山小屋トイレの改善をすすめている。北アルプスの山小屋はほとんどが民営で採算が問題となる。富山県では,トイレ建設費の2分の1を環境省が負担し,さらに残りの3分の1を富山県が負担するので,山小屋の実際の負担は3分の1となっている。長野県では,環境省の補助が受けられない1千万円以下のトイレの建設費の半分を県が補助する制度があり,小さな山小屋や避難小屋のトイレでも改修できるようになっている。
 まずは,槍沢ロッヂをTSS簡易水洗方式に改修しました。土壌処理で,建設費と土地を必要としますが,維持管理費は少なくてすむ方法です。4千万円かけて平成10年に完成しました。次に平成11年にはじまった環境省の事業の補助を受けて,槍ヶ岳山荘のトイレをTSS非水洗方式に改修しました。3箇所のうちの一つを改修し,残りの2つは今年改修の予定です。大天井ヒュッテのトイレは補助事業で便尿分別式のトイレを導入しました。南岳小屋にはソーラー発電で,おがくず式のトイレを4基いれました。
 槍沢ロッヂのTSSは17メートルのトレンチを2本いれてあります。タンクは50トン弱あります。メンテナンスが浄化槽とくらべて簡単であるという特徴があります。紙を分離してもらっているので汚泥もほとんどたまりません。東北の自治体の小屋で多く使われています。槍ヶ岳山荘は北アルプスでも2~3番目に大きい小屋ですが,土壌がないので苦労をしました。非水洗で,トレンチは8メートルになっています。大天井ヒュッテでは,和式の便尿分離の便器をつかっています。軽いのでとりはずして洗うこともできます。中国製で1万円くらいです。尿はトレンチで処理しているので,処理する量を5分の1くらいに軽減できます。南岳では,おがくず式のバイオトイレを使っています。小屋の内部に簡単に入れられるという特徴もあります。浄化槽の汚泥の大半は紙です。北アルプスの小屋では紙の分別をお願いしています。それで処理装置を小さくすることができます。
 エコサニテーションという,屎尿を再利用できる資源だとする考え方が,スウェーデンにあります。富山の国際トイレシンポジウムでウノさんから分別できるトイレの紹介がありました。中国では屎尿からメタンガスをとりだし,煮炊きに使用している事例もみました。重要なのは,混ぜない,ということです。汚水を分離して,種類別に処理して,再資源化し,処理は容易になります。1日一人の屎尿1.2リットルのうち,尿が1リットルです。そのため500リットルのタンクでは1万人の便をためることができるということになります。スウェーデンでは,便と尿を分離して,尿は散布したり,浸透させたりして,便は一定期間貯蔵して堆肥にしています。ミミズで便を堆肥化させるものもあります。中国ではスウェーデンの技術指導を受けて,トイレの改善をはじめています。灰で殺菌するものもあります。豚の屎尿もまぜてバイオガスを発生させるものもあります。
 トイレをどう作るかでその後の維持管理が決まる。電気の供給でみな困っている。バッテリーの更新も問題。その費用が課題となる。北海道では営業小屋がないのだから,維持管理を前提にトイレのありよう,作り方を検討されるのがよいだろう。北海道でも,できるだけ分別して,テイクアウトする方法や,TSSなどが検討されるべきでしょう。

(質問)紙の持ち帰りは根付いているか?

(答え)紙の分別は理解されつつあるが,TSSのトイレが紙でうまることもある。手が自動的に動くのだろう。山の中では必要だということをもっと啓蒙する必要がある。

(質問)便尿分離の便器の使い方は?

(答え)前と後ろを間違える人もいます。簡単に取り外せて洗えるのがよいです。

(質問)TSSのトレンチをつくる場所は?

(答え)トレンチは水平でまわりには活性炭を入れます。自動的に流すには水勾配は必要。春には電熱ヒーターをいれて溶かす必要がある。雪が付く場所はよいが,付かない場所は凍結してしまう。

(質問)中国の便器の材質は?

(答え)グラスファイバーです。

(質問)バイオトイレは便尿分離?

(答え)岐阜県は尿の処理に浄化槽と同じ基準をもとめられたので,尿も入れて処理しているために,おがくずの交換を頻繁におこなっています。槍ヶ岳では分離して便をバイオトイレで処理するように考えています。

(休憩)

5.デスカッション

(岩村)ディスカッションの最初に上川支庁から大雪山の状況について報告をいただきます。

(大道)大雪山の利用のあり方検討事業を18年度から3カ年かけて行います。登山者の増加に伴う、トイレの不足、登山道の崩壊、静けさが失われる、盗掘・盗採などがあり、個別の対応は行われているが、全体的な解決には至っていない。関係機関、事業者、地元山岳会、NPOなどが集まり、共通の認識をはかり解決策を検討するものです。事業内容は、協力金のあり方、マイカー規制などの利用調整、大雪山を利用するルール作り(カムイミンタラコード:仮称)などです。一般公開で行っていますので、関心のある方はお越しください。
 次に黒岳トイレの状況ですが、平成15年9月に設置され、平成16年に本格的に使用され始めましたが、ペダルをこいで拡販するバイオトイレが4基設置されています。熱源は太陽光発電で確保し、同時に風力発電も設置しました。それだけでは足りずに平成17年から発電機を追加しました。予想よりも気象条件が厳しく、電力の確保が不安定だったためです。利用状況は、6月下旬から9月下旬の約100日間が供用期間となります。平成16年、17年、18年と、それぞれ1万8千人、1万4千人、1万5千人の利用となっています。1日あたりでは179人、151人、152人となり、最大では820人、599人、638人で、7月中旬から下旬にかけてにピークがあります。協力金については、利用者に1回200円のお願いをしていますが、それぞれ129万円、119万円、136万円を徴収し、協力したと思われる比率はそれぞれ35、40、45%と年々のびています。管理費に対する割合としてはそれぞれ68、54、68%となっています。
 維持管理のほとんどは、おがくずの交換です。シーズンの最初におがくずを投入し、1基で1日50人の処理能力ですが、土日やピーク時にそれを超えてしまい、おがくずがしめってしまい、処理できずに新たなおがくずに交換します。16年では5回、17年では4回、18年では5回行っています。その経費は協議会から100万円を負担、北海道から100万円を負担しています。主な経費はヘリコプター代、おがくずの購入、トイレットペーパーの購入です。
 これまでの問題点として、電気設備が当初の計画通りに稼働しなかった、処理能力がピーク時に対応できていない、設置時の予想を上回るトラブルがあり多くの経費を必要とした、などがあります。将来的には固液分離を検討したいと考えています。

(参加者おおたなさん)建設費用と管理費用について質問します。

(大道)建設費の4700万円の3分の1はヘリコプター代で、バイオトイレが1千万円、建物が1千万円、残りが発電施設です。管理費の中におがくずの費用と、交換代も含んでいます。

(池田)固液分離を設置すると、いくらくらいになるでしょうか?固液分離にした場合は管理費用は。

(大道)これから方式を検討します。

(穂刈)ヘリコプター代にもよりますが、同じ規模でTSSにすると4,5千万円くらいになるでしょう。トレンチは10メートルくらいのが一つあればよいので、もう少しやすくなるかもしれません。

(大道)おそらく交換するおがくずの量が少なくなると思われます。

(高橋)幌尻岳は年間3千人の利用者で、山小屋のトイレが地下浸透であり、小屋周辺の土壌が大腸菌汚染されていると言われています。日高山脈ファンクラブとしては、2005年に270キロ、2006年に150キロの排泄物を担ぎおろしました。昨年度にバイオトイレが建設されて、そばがらを使用するもので、今年度に水力発電の工事をし、今度のシーズンから稼働する予定です。うまく稼働すれば既存のトイレからくみ取る屎尿も処理させることができるのではと検討しています。ただし、トイレにゴミを捨てるものがいるのが課題です。

(穂刈)かつて、無人の小屋などではトイレにゴミをいれられることはありましたが、営業小屋では瓶などはありませんが、女性の生理用品が入っていることがあります。ゴミは持ち帰りをお願いしています。

(須間)利尻山については、登山者数は最近減少傾向で、年間9500人くらいです。平成12年から無料配布をはじめ、回収率も少しずつ増えてきています。使用していない携帯トイレの改修も呼びかけていますが、ほとんどの方が持ち帰られてしまう。経費的な問題もあり、平成18年から携帯トイレを有料で販売することとしました。税込み400円で、携帯トイレ、マナー袋、パンフレット、アンケート用紙をセットにして、ホテルや商店で販売しています。4946個を販売し、回収2396個を回収しました。昨年度は9210個を無償配布し、2429個回収していますので、回収率は今年度のほうが高い数値にはなっていますが、実際に使った方が購入し、回収数は変わらなかったということになりました。携帯トイレブースは平成14年度に設置し、破損したものもあるので次年度に更新することが決まりました。これから設計をすることになります。平成16年度に連絡協議会を設置し、登山道の崩壊の課題を検討し、土嚢での対策をはじめました。しかし、その土嚢がストックで破れてしまうという状況があり、キャップの販売を検討しています。フェリー内でも携帯トイレについて案内をしています。

(伊藤)南アルプスでは昨年、キャンペーンとして無料配布をしました。小屋の間の距離があるためです。

(岩村)美瑛富士の避難小屋、野営指定地にはトイレがありません。会では、一昨年に清掃作業を行いました。また昨年についてもトイレデーで清掃と啓発活動を行っています。トイレ設置については2万7千筆の署名をいただいた。すぐにどうにかなるわけではないと思うが、現状を愛甲から、提案を仲俣から紹介します。

(仲俣)過去のフォーラムの資料などを参考に検討しました。非水洗で和式の固液分離をし、大はカートリッジをヘリで運び、尿は炭化ボードで処理してはどうかと考えました。管理人がいなくても、メンテナンスが簡単ではないかということです。また巻機山で大をバイオトイレで処理し、尿を炭化ボードで処理するというトイレも参考としました。月2回のメンテナンスとシーズン最後のおが屑の取り出しでよいようです。固液分離ですでに臭いはかなり軽減できますが、太陽光発電で換気ファンと室内照明くらいはできるのではと考えました。さらに美瑛町で管理している避難小屋を、北海道に移管して他の避難小屋と一括してくみ取りをするというようにできないかと提案します。携帯トイレを持っている人も増えていますので、回収ボックスの設置場所も増やしてほしいと考えています。建設コストを安くするための企業の協賛も検討してはと考えます。

(津幡)男性は小だけ分離しなくても直接炭化ボードに行くようにできるのでは。

(岩村)固液分離では、小だけやるばあいは、逆に大のほうに入ることもあるのでは。

(参加者)建設費用と、年間の維持管理費は?

(仲俣)まだ試算していませんが、最低限のものをできるだけ安くできるのではと考えたものです。

(小宮)このトイレで、更衣用のボードを使うような感じで、携帯トイレを使うことも兼用できるようなものも作れないでしょうか?新たに携帯トイレのブースを作る必要もないのでは。

(岩村)様々な方法を組み合わせて対策を検討するべきでしょうね。冬季の耐久性も課題ですね。

(小笠原)万計山荘のように男性用を別に設置することで、混雑の緩和もできます。換気ファンは外に高く出した方がよい、臭いも緩和されるし、ハエの発生も防げます。便槽にEM菌をいれても効果があるでしょう。

(環境省:宇賀神)昨年6月に署名をいただいて、当時の所長や担当官、美瑛町の担当者、山岳会の方々で現場の視察を行いました。1月に美瑛町とトイレの方式と維持管理体制について打ち合わせを行いました。本日の提案も元にさらに検討させていただきたいと考えています。現在、公園の管理計画の見直しをおこない、パブリックコメントを募集しているところです。その中で、美瑛富士については、取り扱い方針について、トイレは方法および維持管理を含めた環境条件が整った上で検討するというように改めました。さらに登山口に仮設でもトイレが設置できないかということも検討しています。

(参加者)美瑛には黒岳のような協議会はあるのか?

(美瑛山岳会:内藤)現在は上川町に協議会があります。美瑛町にはありません。山岳会では、具体的な維持管理は、委託料をもらっては現実的には地元だけでは難しいと考えています。自然公園指導員、山岳救助隊、森林管理署のボランティアなど多くのことをすでに依頼されています。日高山脈ファンクラブのような仕組みも参考にしようと思います。外部からの支援がないと美瑛山岳会だけでは難しいと考えています。

(横須賀)トイレも含めて、山小屋の修繕、歩道の補修など、地域の山岳会のみにそれをお願いするのは無理。これからは、そういったことに取り組む地域外の力も加えた協議会やNPOなどの組織をつくることも検討すべきでしょう。

(岩村)昔だったら、施設をつくってもらって、美瑛町さんお願いしますというところだったろう。しかし、地方も過疎や高齢化がある。これからは地元に預けっぱなしにするというわけにはいかないだろう。

(伊藤)避難小屋でも夏だけお金をとって、アルバイトの管理人をやとったり、巡回レンジャーを雇うということも考えるべきだろう。ニュージーランドでは日本人もボランティアで避難小屋の管理をしていたりする。大雪山なら、ボランティアでも巡回レンジャーなどをやってくれる人や、そのための費用をそれほど多くなくても払ってもらうことも可能だろう。そのためには、管理にかかる費用を明示することです。

(岩村)登山者は必要な経費を払うことには抵抗はない。問題は徴収の方法だろう。

(筑波大学:和田)登山口で携帯トイレを買うことを義務化してはと考えました。その代金にトイレの維持管理費を含めてはと考えました。携帯トイレを使ってくれる人が増えれば、トイレの維持管理費も安くなるでしょう。他の何かの利用料の中に含めてしまうということも考えられます。

(伊藤)携帯トイレを売る場所としてはコンビニが一番でしょうね。

(参加者)協力金が協議会に入るのとべつに、道の負担するお金もありますが、出すことの基準があるのですか?

(大道)協力金は黒岳トイレの維持にあてています。登山道のロープや杭の購入にもあてています。北海道から負担するお金は補助金ではなく、実費としてヘリの代金やおが屑などの品物代をを協議会と折半して払っている形になっています。

(穂積)ニセコの神仙沼で協力金の徴収をしています。木道を新たに整備したおかげで例年よりも多く集まったようです。

(横須賀)ニセコではROSを適用しようという取り組みなども行われています。これまで集まっただけでは足りないと言うことでバスの中で広報できないかとバス会社にお願いしたところ、徴収金額があがったそうです。協力金はいろいろなところでお願いしていますが、実際に集まっている例は少ないです。それには広報が課題なのではないでしょうか。

(小枝)管理計画の改定について意見提出の準備をしています。すでに道が設置した避難小屋は道で管理されている。新たに国が直轄で設置するものについては環境省で設置するのだが、維持管理は課題となります。南アルプスの北岳山荘のバイオトイレではチップ代が30万円くらいしか集まっていない。これにくらべると黒岳の徴収率は高いと言えます。しかし、それだけで維持管理を考えるのは無理でしょう。美瑛富士では徴収の方法が課題でしょうね。

(横須賀)携帯トイレを使ってみようという呼びかけをしてきました。利尻以外の場所で携帯トイレだけですすめるには無理があるだろう。心ある登山者で携帯トイレを使っている方もいます。しかし、それを一般の方にお願いするのは難しい。

(ムッシュ:鈴木)山のトイレマナー袋の作成を、通販売り上げの一部を山の環境のために役立てるという取り組みにおいて、利尻の登山口への携帯トイレの回収ボックスの設置に引き続き、取り組んでいます。昨年やっと現地に赴くことができました。参加したツアーのみなさんが抵抗なく携帯トイレを受け入れていたのに驚きました。全国的なアナウンスが必要だろうなと感じました。マナー袋も北海道に限らず全国いろいろなところで広報していこうと考えています。

6.代表挨拶:横須賀

長時間みなさんありがとうございました。この成果を次のフォーラムにつなげていければと考えています。これまで代表をつとめてきました。これから代表を岩村さん、副代表を小枝さんにお願いすることになりました。さらに取り組みをすすめていきたいと考えています。よろしくお願いします。

(新代表:岩村)8年やってきましたが、自分たちでできる範囲内のことをやろうというのが信条です。歩みが遅く見える部分もあるかと思いますが、みなで知恵をだしあい、少しずつ進めていきたいと思います。よろしくお願いします。

(新副代表:小枝)山岳環境問題への熱意は負けないつもりです。みなとがんばっていきたいと思います。よろしくお願いします。

(穂刈)みなさんが熱意をもって取り組んでおられることに感動しました。

(伊藤)こういう機会に参加させていただき、ありがとうございました。

(以 上)                                             

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