山小屋とトイレ
~第2回山のトイレフォーラム(2001.2.3)から~

松浦孝之(空沼岳万計山荘友の会)

                                        空沼岳万計山荘のホームページ

1.空沼岳万計山荘友の会とは(友の会の紹介を兼ねて)

 旧営林署の山小屋 空沼岳万計山荘は1965年11月に建築36年目になります。建築当時のフイルムを見ると、若者が山荘の前でフォークダンスに興じている姿が映し出されています。1泊2日の楽しい登山を楽しんできたのでしょうか。

 車社会の到来とともに山小屋の宿泊者が減少、利益が得られない状況の中、委託業者も現れず、数年間管理されず放置されたままでした。見かねて、1995年5月に登山者・自然愛好家が友の会を結成し、当時の札幌営林署と確認書を結び、自主管理を始めました。5年目を経過したころから、建物の傾斜が目立ち危険に。傾斜は7度にもなったため、今冬は閉鎖し、修理募金を訴えてきました。650万円の内、現在500万円に近づきつつあり、春までには目標をやりきり、6月には工事を行う考えです。

 なお、石狩・層雲峡森林事務所の森林官である穂積さんの報告では、黒岳の石室でさえ危険で森林管理者が宿泊できない状況とか。トイレ問題も深刻とのこと。基本的には万計山荘と同じ状況にあるようです。北海道の山小屋の多くが問題を抱えている状況であることを知り、近くトイレ問題を含むアンケート調査を行うとともに北海道の山小屋の在り方を問うフォーラムを近く開きたいと準備しています。21世紀、北海道の山岳と山小屋の関係、自然との共生をどう考えていったらよいのか話し合う場を作っていきたいのです。

 また、札幌近郊の山が荒れる、登山道が荒廃してきています。国(森林管理署)、道、札幌市という縦割り行政の弊害も指摘されています・・・一番身近な里山が開発と管理放棄の中で荒れてきていると感じるのは私だけでしょうか。

2.万計山荘とトイレ

 空沼岳登山者1万人近く、大半は日帰り登山者です。そのうち、万計山荘のトイレ使用者はその6割以上、登山口から約1時間半~2時間の所にあり、丁度山頂までの中腹にあり、トイレは行きと帰りに利用されている現状です。
 6月~10月の土日は自主管理に入り、特にトイレ掃除を念入りに行っています。きれいになった分、利用者も増大している。トイレが汚い時期、山荘の回りには白い花が咲いていたことも。テッシュの紙である。そういう時、野外で行う方が多くなるらしい。
 使用者が増えると、汚物の量が増え、ME菌を使用して抑えてはいるが、暑い夏場にはウジ、はえが出ることもあった。

 こうした経験から、いくつかの課題や問題が浮かび上がっています。

(1) 日帰りの山でも、登山口か中腹にある山小屋ではトイレが必要な山があること。登山者の中には、トイレの存在や場所を頭に入れて山を選択したり、行動を考えている方もいます。安心してトイレが出来る環境づくりが大切です。きちんと掃除しないと、汚し放題となり、さらにひどくなると山小屋の周りにするなど、かえって環境を汚す原因になります。

(2) 登山者のマナーについて
毎週、掃除しているとわかるのですが、きれいなトイレでは登山者もきれいに使おうと努力している様子が見えます。汚すと自分から掃除する人もでます。反面、心ない登山者もいます。トイレに異物を捨てる。テッシュの袋などのビニル・・・。トイレットペーパーの使用の必要性さえ知らない人がいるのが現状です。

(3) 浸透式のトイレ  春は汚水が満ち、秋にはからから
山荘の前にある万計沼から大腸菌が検出されます。明らかに汚染されています。特に夏場はトイレ利用者が多く、また沼の水温が上がるため、沼の水が臭く感じます。溜めておくとぬるっとするぐらいです。この水が真駒内川に流れているのです。沼の植生も変わってきていると指摘する人もいます。 トイレの汲み取りをしたことは2回あるが、浸透式のためからからの状態だった。長年汚物が土中に浸透している証でもあります。万計山荘は便そうを入れることにしているが、全道の山小屋の大半は浸透式のままです。

(4) 行政の問題
山荘は国のものだが、林野行政が赤字のため修理さえ出来ないとのこと。道、市は国の施設にはお金を出せないとの理由で検討課題にもならないらしいのです。
空沼岳登山口に簡易トイレ設置の話が札幌市よりあったが、掃除等の管理は万計山荘友の会へお願いするという姿勢であった(山荘の管理で精一杯の友の会なのでお断りしたが、その後どうなっているのであろうか・・・)。
トイレのくみ取りを市に依頼、2回とも無料でお願いできたが、今回限りという返事であった。トイレ使用者は殆どが札幌市民であるというのに、また、営利の団体でない友の会にまで支払いを求めるとは・・・。コンクリートの便曹に替えるので、札幌市は公園と一緒の考えで、無料で定期的にくみ取りをして欲しいものです。

3.登山者とトイレの問題

 個人的には紙の持ち帰り、汚物と紙の分離の実践はしているが、登山者に理解は求めても、一律に解決を求めるのは難しいのではないだろうか。オーバーユース問題とトイレ問題が大きく関わっている。そういうところは臨時に夏場だけトイレの設置とか、持ち帰りがしやすいような施設を設置する。
 山小屋は便漕化を早急に進めることが必要だ。また、山小屋でも使用したトイレットペーパーは各自回収していくことを呼びかけたい。
 日帰り登山者が多いところの登山口にはトイレ設置を進めることが求められている。特に札幌近郊、人気のある山域の登山口には立派なトイレまでは求めないが、清潔感のある明るいトイレは必要だと思う。藻岩山でさえ満足なトイレが登山口にない状態だけにもっと山を愛する市民は声を上げなくてはならないと思う。
 山のトイレ問題の完全な解決策は今のところないと思う。今より少しでも良くなる方策を多面的に、しかも具体的に改善を進めることが、よりよいものへと運動が加速するのではないだろうか。登山者と行政側が協力してこそ実現すると思う。